生まれ変わっても変わらない思い。現役イタコに聞いた怖い話

生まれ変わっても、もう一度同じ人と出会いたい。
恋愛の普遍的なテーマでもあり、映画、漫画、小説など幅広い分野でこの考えや名前を見ることがあると思います。
今回はこの生まれ変わった話を現役イタコの方にお伺いしました。
今回お話をお伺いできたのは恵子さんのイタコ仲間の陽子さん(仮名)になります。
恵子さんよりも年配であり、イタコ歴も長い方になります。
元々の霊能力が強かったために一般職ではなく口寄せ、イタコとして生きることを選んだ方であり先天的な霊能者になります。

先ほど、生まれ変わった話を少しされていてそれをちょっとお聞きしたいのですが

陽子さん

いいですよ。といってもね、結構後味の悪いお話になるんだけども

お願いします

陽子さん

あなたは、生まれ変わりってあると思う?

あることにはあるとおもんですが、どんなふうに?って聞かれればわからないですね

陽子さん

それくらいの感覚で聞いてもらえればいいわね……何しろ私が若いころの話だから。そんなものだと思って聞いてくれるかしら

はい

陽子さん

とある男性がいたの。その人は、たまたま私と同じように元から霊能力があった。当時の人から見れば今よりもずっと異質なものだったし、生きていくのは、きつい人はきつかったと思うのよ。で、あまり人に好かれない性格だったのよね。霊能者ってそれだけでも異質なのに、あまり人から好まれない性格だとどうしても孤立してしまうし、視野も凄く狭くなってしまうのよね……

今でもネットの情報だけを信じて視野が狭い方って多いですね

陽子さん

そんな感じなのかもしれないわね。だから余計にこうね、誰かに優しくされたり、笑いかけられる、話してもらえるだけで自分に対しての行為を持ってると考えてしまう人というか。そういう事であまりよくないお話が生まれてしまったのよ

なんだかあまり好ましくない人ですね

陽子さん

当時でその人が三十も半ばくらいだったのかしらね。そんな感じで暮らしていたから当然、彼は女性に対しても憎しみに近いものを持っていたのよ。なぜ自分を愛してくれないのか、自分は愛されて当たり前の存在なのにって考えだったと思うのね。今考えると

そういう方、今も増えてますよ。ただのネット上の会話もしたことながいような関係でも自分とあの人は恋人になれるとかあの人は自分を好きだとか思っている人。男女関係なくいますね

陽子さん

それに近いわねえ。そんな中である女の子が彼にただ笑いかけたのよね。もちろんそれは当時でいう近所の人には挨拶をしなさい程度の常識的なものだったのよ。今だと近所の人へのあいさつさえも不審者として見られてしまうけれども、当時はそんな事もなくあくまで一般的なものの範囲だったのよ

最近は近所の人でもあいさつできなくなってなんだかなあって思う部分はありますね

陽子さん

それでね、彼はやっぱりそのね……あの子は俺のことを好きなんだって思うようになってしまってね。その子を霊的な能力で透視したり監視したりもしてたんだけども、直に触れたいと思って待ち伏せをしてしまったの。それで当然だけども女の子は彼を拒否した。彼はそれに対して“照れている”と考えて連れ去ったのよね。当時の考え方の一つに傷物にしてしまえばあきらめて嫁ぐというものも嫌な文化だけれどもあったから。彼はこれを自分に都合よくとらえてね

うわあ……それはとても嫌ですね……迷惑以外の言葉が出てこない。嫌な人だ

陽子さん

でもね、数日前からその女の子のお家の人も不審に思っていたのよ。それで、やっぱり同じように霊能力を持つ人に依頼をして、千里眼で誰が悪いことを考えているのかを見てもらっていたのよ。今なら透視や霊視って言葉でも当時は千里眼のほうが広く浸透していたのよね、田舎であればあるほどに

千里眼、心中も見れるってやつですよね?

陽子さん

察しがいいと助かるわねえ。その通りよ。今だと霊視で簡単に伝わるけどもね。その千里眼で子供に迫る危機を予想しててすぐに乗り込んでいったのよ。当時はまだ離れとかもある家はある時代だったからね。離れにすぐに乗り込んでいって。子供さんは花嫁装束でまだ無事だったからよかったんだけども。着替えさせてご両親は自宅でしばらく子供さんの心身のケアに回っていたのよ。その間にも問題の彼は監視と隔離されている状態だったのよね。ただ、その状態でも彼も千里眼……まあ、霊視、透視はできるから女の子の日常や着替え、入浴とかを見ていたのよね

犯罪ですね

陽子さん

わかる人にはわかるけれども、霊的なものがない人からすればただニヤニヤと何かを見つめながら気持ち悪いとしか思わないかもしれないし。なので、女の子の家でも霊能者……まあ、方言でいえば口寄せになるわね。イタコをたてて彼がこちらをうかがうことができないようにしてしまったのよ

でもまあ……気持ち悪いですから当然の対応というか……

陽子さん

恵子さんを見てるとわかるとは思うけれどもこういう霊的な力は使い方を間違えると本当に不幸しか呼ばないのよ。なのできちんとした使い方、考え方が大事だしこの力がある方が辛いなら使わない方向を覚えることが大事になるのよ。必ず霊能者やイタコにならなければいけないということもないのだからね

思い切り間違った使い方になってますよね

陽子さん

見ることを奪われたから今度は生霊を飛ばすようになったのよ。どうしても触りたかったんでしょうね。自分だけのものにしたい。女性ではなく少女……少女というよりも子供よね、年齢が一桁なんだから

思い切り犯罪ですよね、江戸時代くらいの殿様とかじゃないかぎり年齢一桁の恋人や奥さんとかはないかと思います。でも……その場合は殿様も十四とか十五とかで……

陽子さん

年齢差はちゃんと考慮されてたぶん江戸のほうがはるかにましなんじゃないかしらね。今回は自分の言うことをきかせることができるという部分が大きいからね

どうなったんですか?

陽子さん

彼は確かに霊能力はそこそこ強かったとは思うのよ。それでも圧倒的に経験則が足りなくて知識も足りない。頭はよかったけれども賢くはないというのが正しいかもしれないわねえ……そんな彼の行動はやっぱり予想されていてね。霊体が女の子にたどり着けることはなかったのよ。当然だけどもそんなことを繰り返していけば体や魂に影響が出ないわけがない。ゆっくりとその寿命を対価にして何度も何度も来たらしいんだけれども……長くは続かなかったのよね

……………………

陽子さん

その命が尽きるのと同じ時に生霊も消えたわね。彼の葬儀はひっそりとされてお墓も分けて作られた。女の子には彼が亡くなった事は伝わらないようにして、彼女の家はその町を出て引っ越すことになったのよ。丁度学年も変わるのに合わせたので不自然ではなかった。こんなことは覚えておく必要もなく、思い出して苦しむ事も無いようにその口寄せは娘さんの記憶に厳重に蓋をした。娘さんは日常を過ごせるようになったのよ。もちろん、真相を知る人もいたけれども誰も何も言わなかったのよ。この話を請け負った口寄せ……イタコも代替わりしてこの話は口伝として伝わることになった。もちろん、直の弟子や後継者だけではなく近隣のイタコやイタコの候補にも。自分の能力をしっかりと把握することにつながること、この力を使い方を間違えることは自分の身を滅ぼすことになることを理解するにもね

陽子さんも口伝で聞かれたんですか?

陽子さん

私もその時に口寄せとしての訓練と修行をしていてね。その時にご本人から口伝で教えていただいたのよ。その中で私は人と人との縁にかかわる部分の力が強めであることも教えてもらえたから、そこを磨ければとも思ったのよ。例えばだけどもこういうことがあった場合に本来の縁を結ぶ、危ない縁を切るということが特化できれば被害を最小限に抑えることもできるんじゃないかなって、若かったから思ったものよね。もっとも、そんなに簡単にはいかないんだけれども

引っ越して縁が切れるならそれはそれでいいですよね

陽子さん

それがそうでもなかったのよね。死んでも迷惑な人っているのよ

最近同じ言葉をあちこちで聞いてます……っ

陽子さん

生前の彼はとにかく執着が強かったのよ。そして彼からしたら本気の恋愛であったのと同時に性の対象でもあったのよね。この三つが一体になると本当に面倒なのよ。とくに性欲が強かったのが亡くなったときの状態でもわかっているのよね……

想像がつきますが言わないでおきます……

陽子さん

大体その想像で合ってるわよ

イタコの人はすぐに人の中を覗けるのを今改めて確信しました

陽子さん

それでね、まあしばらくは何もなかったのよ。時節が二巡して、その娘さんが結婚することになったのよね

二巡、二十四年であってますか?

陽子さん

それで大丈夫。旦那さんもとてもいい人で、私たちにもその話が来た時には“ああ、ちゃんと素敵な相手に巡り合うことができた。あの縁はなくなったんだ”って思ったのよ。それからも幸せな生活をしているという話は聞いても問題があるとかは聞かなくて。
最初に担当した口寄せの方も亡くなってしまったし。このままこのお話は終わりだと思ったのよね

ということは、終わらなかったんですね……

陽子さん

で、子供さんを授かったのよ。でもね、こちらに伝わってくる話はその娘さんが“生みたくない、怖い、怖い”ってずっと言ってるってものでね。今でいうマタニティブルーってやつだと周りも受け止めていていてね。初産であればやはり誰も不安は感じるし、嫁ぎ先のほうでも娘さんをすごく大事にしていたから心配はしていたのよ

……………………

陽子さん

あなたが言葉をなくすのも納得なのよ。結果として娘さんは男の子を生んだのよ。それでもやはりかわいいとは思えないという気持ちがあり、ずっと怖がってたのよ

うわあ……

陽子さん

あなたは独占欲ってどんなものだと思う?

全部ほしいとかそういうやつですかね?

陽子さん

簡単にすればそうなるわね。歪ませれば人が関与できない部分に侵入するというのもその独占欲の一つだと考えることもできるわね

あー……

陽子さん

人は無防備になるときがあるのよね。死んでもその思いは残っていて彼は娘さんの卵子に侵入したのよ

怖い怖い怖い

陽子さん

たしかに、一体になれるし産道をこじ開けるなんて旦那さんには絶対にできないからね。まして自分の体も手に入れることができる。邪魔をする口寄せもいない。季節も二巡して色々なほころびができていた。彼にとっては千載一遇の好機でもあったのよ

それで……

陽子さん

それで不安を抱えながらも子育てをしていたのよ。それから生まれた子は恐怖も不安も感じることなく、育児を続けていて時間は過ぎて行ったのよ

…………………

陽子さん

そして、ある日長男は娘さんにこういったのよ“僕だよ、やっと君を愛する体を手に入れることができた”と

うわあああああああああああああああ

陽子さん

記憶の蓋がはがれ娘さんはすべてを思い出してしまったのよ。そして、残念なことに命を絶ってしまった。そして、彼女の旦那さんからどうしたらいいのかという相談が口寄せに持ってこられたのよね。どう考えても普通に対処できるものでもないし、口伝で聞いているイタコがいればことも進めやすい。それで私もその中の一人になってね。縁を関係する、結び、切ることのできるという部分だとは思うけれども

はい

陽子さん

姿かたちは男の子なんだけども、もう気配がひどくてね。臭いも獣の臭いなの。人を辞めてしまって本能と欲だけだとこんな臭いになるのねって思ったわ。それで口伝で聞いていた私たちは即座にそれが彼だと確信もできてね。でも、同時にもう彼女が死んでしまった事となぜ自分を愛してくれないのかと獣のように泣くのよ。こんなに好きでこうして生まれてきたのに、と

………………

陽子さん

けど、彼はこの人生を終えても娘さんの処に行くことはできない。生きるのも死ぬのも空しい結果になるだけ。しかも娘さんを殺したのは彼が原因である。それを理解させてどうするのかを一人のイタコが迫ったのよ、彼に

はい…………

陽子さん

おまえが諦めずに、自分の欲だけを貫いたから娘さんは死んだ。お前は次の生まれの輪では人にはなれない。だが、私はお前を消すこともしない。消して楽になる、楽にさせるなどは娘さんと家族を思えば絶対にできない。同じ苦しみを背負い、長い時間その苦しみの中で存在しろ、って言う事をね

すごい結論ですね…………

陽子さん

淡々と、荒げることもなく、本気である事を伝えることができる声だったわねえ……それで、彼にとって苦しい結果になるものをいくつかそのイタコは提案したわ。その結果、彼はその家を、その血筋を守ることになった。今後、あの娘さんの血が寄ることも混ざることもなく、見知らぬ家族の系譜が幸せになることを見守ることになった。家を守るというのは建物ではなくその血筋を守ることになるからね……その家からでた子供さんたちは今後も女の子が生まれることはない。今も生まれていないしね。彼がどれだけ娘さんの面影を求めてもそれさえも消していく事になるという呪いね。結局は呪いに対してさらなる呪いで上書きしてる状態になるんだけども……血筋と彼の縁を結ぶのに私や何人かのイタコが参加してこの結果で終わったのよ

陽子さんの自宅からの土地で考えると、もしかして……

陽子さん

そうそう。男の子しか生まれない家、男のが生まれる確率が異常に高い土地って言われてるわね。そうなるとだんだん人もいなくなってしまうから……ゆっくりと過疎を迎えていくのよね

人がいなくなっても、そこから離れることができない……

陽子さん

最終的には土地に縛られることになるのよ。さみしいと感じる心だけが残って、風化するには気の遠くなる時間を過ごす。命の代償って大きいわね

本当に後味の悪い話ですね

陽子さん

すべての結末が幸せなものであればいいけれども、そうでないこともすごく多いのよ。それでもどこかで結末を迎えさせることもイタコの依頼には多くなる。縁を結び、縁を作り、縁を壊し、縁を切る。それも自分の特性を知っておけばできることになる。その結果、少しでもこんな話がなくなってくれたらいいとは思うのよ

すべてがハッピーエンドなんて都合のいいものはないですからね……その子供さんはそのまま成長してしまったんですか?

陽子さん

これは私は関わってないけども、器は普通の子供だから本来の魂を引き上げて悪意ある存在を切り離し、普通の子供さんとして生きていたわよ。若くして亡くなってはしまったけども、お母さんの記憶はほとんどなくて、写真を見ても理解できなかったみたいね

本当になんともいえないですね……

陽子さん

それ以来、どんな仕事であってもきっちり止めをさしてのちに起きる事故を防ぐようにしてるわよ。それは恵子さんもでしょ?あの人のこの話を知ってるから躊躇なく消滅を選ぶし

ものすごく肉体言語でやってるとは思います。ただ、私は恵子さん大好きです

陽子さん

あなたはそのあたりは嘘はつかないからね。そうやって私たちのことを信じて話を聞いてくれる人はそれなりに守られるものを身につけやすくなるから

まさか正月早々にこんなにヘビーな話を聞くことになるとは想像しませんでしたが

陽子さん

まあ、このお神酒も私たちが念を入れたから少しだけ飲んで流していきましょうね

差し支えなければ今後もお話とか聞かせていただけると嬉しいです

陽子さん

私でよければ。また会うことも多くなると思うからね

ありがとうございます

全てが幸せな終わりではないということを聞くことができました。
このお話に出てくる彼の時効が来るのはあと数百年だそうです。